皆さんは『笹野一刀彫』をご存知でしょうか?
鋭い眼光、重厚な佇まいに美しい羽をもち、商売繁盛の守り神とされる「お鷹ぽっぽ」など
米沢市の南部、笹野地区で代々受け継がれている伝統工芸品が
『笹野一刀彫』です。
千数百年余り続くこの伝統工芸品を、絶やさず未来へつなげるために奮闘している方々がいます。
それがこの記事の主役『おたか三兄弟』です。
3人ともずっと同じ南原地区で育ち、保育園から中学校まで同じ学校に通い、
一度はそれぞれの道に進みながらも、「米沢らしいもので米沢の為に何かしたい」
その思いのもと集まった双子の兄弟と幼馴染の3人。
笹野一刀彫と3人の物語を知れば、応援せずにはいられない。
そんな魅力的なおたか三兄弟をmeets8は応援し続けます!
笹野一刀彫に欠かせない「コシアブラ」
笹野一刀彫は、山菜でおなじみ「コシアブラ」の樹を主に使用します。他には槐の樹など。
コシアブラがもつ独特な柔らかさこそが、笹野一刀彫の特徴であるカールや羽を綺麗に保たせてくれるのです。
また、その白さが美しい艶と光を作り出します。
実際に彫り始めるまでの木の準備には、多くの手間と時間を要します。
まずは、コシアブラの樹をチェーンソーを使って集めます。
1ヵ月ほど山に通い続けます。
樹が水を吸っていない秋から、春の雪が解け始めるまでの時期で、乾燥している状態の樹を切ります。
そうでないと乾燥時に割れてしまうんだとか。
次に樹皮を剥いた状態にして、室内で乾燥させます。
太さにもよりますが、細いもので半年、太いものだと1年~2年かかるといいます。
彫り始めるまで道のりは遠い…!
笹野一刀彫はケガがつきもの
笹野一刀彫に語るうえで、
その危険性に触れないわけにはいきません。
「サルキリ」と言われる、刃物を使って彫っていきますが、
このサルキリ、実は日本刀と同じように、
手打ちで作られた切れ味抜群の道具。
また、笹野一刀彫はサルキリを自分の方に向け、彫っていくため、非常に危険で、神経を使う作業です。
日本各地に様々な工芸品がありますが、自分に向けて刃物で掘り出す(危険な)スタイルは笹野一刀彫くらい。
彫る作業はもちろん、材料集めで山に入れば、熊や蜂や蛇。
危険は山ほどあります。
のこぎりやチェーンソーを使ったり、
制作は文字通り命がけで行われています。
米沢を愛する双子の兄弟と幼馴染
1982年、83年に米沢市南原地区で生まれた3人は、保育園~中学校まで同じ学校で育ちました。
高校卒業後、それぞれ米沢を離れた後も、毎月のように集まり、
「将来何か面白いことを一緒にやりたい」
と話していたそう。
それぞれ米沢に戻り、別々の仕事につくも、相変わらず集まっては語り合っていました。
30歳を過ぎたころ、3人は決心します。
「米沢の為に米沢でしかできないことをやろう」
そこで考えたのが地元にある笹野一刀彫。
以前彫っていた方に聞きに行くと、「売れない、材料がない、後継者もいない」と待っていたのは厳しい現実でした。
しかし、そこでも3人はあきらめません。むしろ笹野一刀彫の魅力とその可能性にどんどんはまっていきました。
本気で志すということ
その熱意をもって、師匠となる当時の組合長のもとへと向かいます。
しかし、なかなか首を縦には振ってもらえませんでした。
というのも、笹野一刀彫は前述の通り、ケガがつきもの。
作り手の人々も気軽に勧められないのが現実。
今までも、やりたいという人はいたものの長続きしないことがほとんどだったのです。
弟子として受け入れられるまでの間は、師匠からコシアブラの樹をとってこいと指令を与えられました。
コシアブラがどんな樹なのかも分からないまま図鑑を3人で覗いて、コシアブラの樹を探したり、話し合いを重ねて、熱意を伝え続けました。
また、和寛工人は、会社を退職。退路を断ち、本気で笹野一刀彫に向き合う決意を固めていました。
話をしてから、弟子入りが認められるまでは半年かかりました。
ついに弟子入りが認められ、2014年師匠からサルキリを譲り受けます。
修行の日々。
修行が始まってからは週一回、師匠からの彫りの指導を受けました。
職人の高齢化で時間がない中、とにかく笹野一刀彫の技術を受け継がなくてはいけない。
それぞれがフルタイムの職に見切りをつけ、笹野一刀彫に全身全霊で取り組む日々です。
定番の鷹からはじまり、にわとり、山鳥、亀、削り花と少しずつレパートリーも増えてきたころには、
修行から丸2年が経過し、笹野一刀彫組合に入ることができました。
ここからが
工人としての新たなスタートです。
後編に続く…!
退路を断って本気で取り組む3人。修行の日々を積み重ねて行くうちに笹野一刀彫の魅了されていきます。
後編では、おたか三兄弟の描く未来と作品を紹介します。
お楽しみに!
※後編公開されました!
笹野一刀彫おたか三兄弟
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笹野一刀彫おたか三兄弟@sasanoittobori
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